JRPGの王へと至る道「二ノ国Ⅱ レヴァナントキングダム」レビュー

『期待』は印象を大きく変える。

待ち望んだものが期待を上回れば、印象はより好ましくなり、逆に下回ることになれば印象はより悪くなる。全く期待していなかったものが、思いがけず良いものだったときには印象は大きく好転する。ゲームに限った話ではなく、多くの物事に言えることである。

3月の気になるゲームとして取り上げた「二ノ国Ⅱ レヴァナントキングダム」は、私が期待していたゲームだ。

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PS3で発売された前作に、3大JRPGの一角を担うだけの可能性を感じることが出来たからこその期待である。

前作を上回り、JRPGの高みに登ることが出来たのか?それとも登り損ねたのか?「二ノ国Ⅱ レヴァナントキングダム」を見ていこう。

目次

トップレベルのアニメ調グラフィックは健在

前作を受け継いだ、ジブリアニメを思わせるグラフィックは今作でもしっかりと受け継がれ、クオリティは進化している。

前作ではカメラが寄ったときに、多少のカクツキが見られたりもしたキャラクターも、違和感を感じない滑らかさで表現され、戦闘時でもイベント時でも処理落ちなどすることなく美しい。

ダンジョン内でのライティングもしっかりとわかる。

アニメ調のグラフィックを用いても、ライティングによる明と暗の表現は美しく表現されている。前作では背景もアニメ調で統一されていたが、今作では写実的な表現に変化している。プレイする前は違和感を感じないだろうかと危惧したが、写実的な背景との調和はうまく取れていると感じた。

カットシーンでもライティングは美しく、抜かりはない

「日本独自の」という点を突き詰めていけば、トゥーンシェイドを用いたグラフィックは最善の選択肢になるのかもしれない。ドラクエ11、ペルソナ5、ゼルダの伝説Botwとトゥーンシェイドのゲームはあるが、「二ノ国Ⅱ レヴァナントキングダム」はトップクラスのグラフィック水準を持っている。

作り込まれた街並みは居心地の良さを感じる

私が一番気に入ったのは、序盤に訪れる「ゴールドパウンド」という街だ。台湾の街並みをイメージしたというこの街は、アジアンテイストに彩られ華やかさと優雅さを感じさせた。流れる音楽もイメージとマッチしており、街を隅々まで探索するのが苦にはならなかった。

エバンの母国ニャンダールも暖かい色使いで彩られる。

写実的でありながらも、アニメ風味を感じるグラフィックは不思議な感覚だ。数は多くはないが、今作に登場する街はそれぞれの特徴をしっかりと表現できている。

同時に久石譲氏のBGMが街並みの特徴を捉え、イメージを増幅させる。

ストーリーを進めていくと訪れる水の街「シーラザラカン」という街があるのだが、到着した当初は私のイメージとズレた印象を受けた。

女王の目が特徴の水の街。

しかし、ストーリーを進めてこの街の真実が見えてくると、流れる音楽が腑に落ちるものへと変化した。グラフィックと音楽による街並みの表現は、本作の魅力のひとつでもある。

ダンジョンの作り込みには疑問も

一方で、ダンジョンの作り込みはうまくいっていない印象を受けた。

ダンジョン内の仕掛けも少なく少々寂しい

フィールドに点在するメインとは別のダンジョンは、あきらかに使い回しと思われる作りが多く、探索するおもしろみに欠けている。ストーリー上のメインダンジョンはそれなりに作り込まれているが、こちらも数は多くなく物足りなさを感じるかもしれない。

街の作りのように、息を呑むような美しさを感じられたら印象は変わったかもしれないが、本作のダンジョンで印象に残る場所は?と問われても、ここが!と挙げられる場所は思いつかない。力の入れ方に温度差を感じないような作り込みなっていたら、と残念に感じてしまった部分である。

一新されたバトルシステム

前作では、リアルタイム性とコマンドバトルという形を取っていたが正直うまくいっていなかった。その反省からか、今作ではアクション要素の高いバトルシステムへと変化している。

アクション性の高い戦闘システム。

操作自体は難しくなく、ボタン連打しているだけでもそれなりに戦うことができるのだが、ボス戦などは敵の攻撃モーションを見抜く、位置取りを考えるといった戦略性も必要になっている。

魔法や技のエフェクトは派手で見た目も楽しい。

ボタンを押して繰り出される攻撃は、モーションも豊富で攻撃を繋げていくことの楽しさにも繋がる。回避行動には無敵時間も設定されており、敵の攻撃をうまくかいくぐってからの反撃といった流れは、まさにアクションゲームだ。

本作では、敵モンスターにもレベルが設定されているのだが、アクション性が高い戦闘となったことで、自分よりも高いレベルのモンスターとも操作次第ではどうにかやり合えるという、良い意味でRPGらしくない要素も生んでいる。

バトルシステムを一新した本作は、成功したようにも思えるが…

あと一歩が足りない

アクション性が高くなり、そのアクション自体も作り込まれた本作は見事に進化したと思えるが、中盤以降にダレてくる。

戦闘は少し戦略性に欠ける。

まず、仲間と戦っている感覚が薄い。共に戦闘に参加する仲間は、それぞれが自動で戦ってくれて、AIは前作ほどバカではない。が、あくまで個々に敵を攻撃していくというスタイルで、協力して攻撃を行うといったことはない。そもそも、仲間に行動指示するという要素がないのだ。

キャラ切り替えはできるのだが、その必要性はあまり感じない。一応、キャラごとに覚えるスキルの違いや、セットできるスキルの数に制限があるので、切り替えて有利に進めるといった戦略もあるのだろうが、私は最後まで戦闘中のキャラ変更を使うことはなかった。

例えば、コンボを繋げるとか、技と技を繋いで大ダメージを与えるといった要素があれば、もう少しダレることなく戦闘を楽しめたかもしれない。アクション部分が悪くないだけに、あと一歩と思ってしまう。

今作のバトルパートナー「フニャ」

一応、バトル中の連携要素として「フニャ」と呼ばれるバトルパートナーが用意されている。彼らは、戦闘中に様々なスキルを発動して援護してくれたり、自分が操作するキャラクターが発動するスキルを強化してくれたりする。

しかし、このシステムもあまり戦闘を面白くしているとは言いがたい。

必須かもしれないのは、フニャ同士の連携技にある回復スキルくらいで、他の要素を最後まで意識して使うことはなかった。本作では、回復出来る要素が限られているのでそこだけは頼りにしていた。

フニャとの連携

このフニャ連携技は、準備ができたフニャのまわりにサークルが発生して、そこへ行きボタンを押すことで発動することができる。近接戦闘をメインにしていると、カメラがキャラとモンスターに寄ってしまうので、サークルの発生が確認できなくなる。

遠距離と近接攻撃を織り交ぜながら戦えばよいのかもしれないが、アクション性が高いが故にゴリ押しが有効になってしまうので、そうもいかない。

フニャを増やす、育てるといった要素に楽しみを見いだせれば、フニャとの戦いも楽しめるのかもしれない。私はフニャの必要性を見い出せなかったので、フニャも序盤に揃うものでろくな育成もせずにラストを迎えてしまった。

特殊なオーラをまとった「魔瘴気モンスター」

また、モンスターの種類も限られており、「魔瘴気モンスター」という特殊なモンスターがいるのだが、行動パターンはどれもほぼ同じとなってしまっており、攻略法も同じという味気ない存在になってしまっている。

バトルシステムを一新したことは概ね成功しているとも言える。しかし、「FF15」もそうであったように、アクション性を高めた戦闘は、ゴリ押しが最大の戦術となってしまっている点は「二ノ国Ⅱレヴァナントキングダム」においても同様のことが言える。

RPGにアクション性の高い戦闘システムを落とし込むという点では、今一歩物足りないと言わざるを得ない。

国とは何かを感じさせるストーリー

二ノ国Ⅱのストーリーは、国を追われた若き王が世界を統一する偉大な王になるまでを描くというものになっている。

国を追われた少年が、やがて立派な王になるというあらすじを聞いて、誰もが「アルスラーン戦記」を思い浮かべるだろう。しかし、二ノ国Ⅱは「アルスラーン戦記」ではない。

クーデターによって自国を奪われ、国を追われたエバンはすぐに自分の新しい国を作ると決意する。もう一人の主人公ロウランは、一ノ国と呼ばれる我々の世界のような場所から二ノ国へと転送されてくる。彼も転送されてきた直後に、この世界で生きていくと決意する。

自分の生まれた国、世界、場所とはそんなに簡単に捨てられるものだろうか?

自分の国を奪われた人間が、なぜ奪い返すという普通の考えに至らないのだろう?自分が居た世界とは別の世界に飛ばされてしまった人間が、なぜ元の世界に帰るという普通の考えに至らないのだろう?

『国』とはそんなに軽いものだろうか?

似たような境遇から物語が始まる「FF15」は、国を奪還するという意思を持って旅する分まだキャラクターにも共感が持てた。「アルスラーン戦記」も同様に、国を取り戻すというごく普通の考えの元に物語が進むからこそ、共感し楽しむことが出来る。

あっさりと自分の国、世界をためらいもなく捨てるキャラクターにまず、置き去りにされてしまう。

キャラクターを語るということ

驚くべき適応力を見せるロウラン

ロウランは別の世界から来たにもかかわらず、二ノ国の世界に驚くこともなく淡々と適応していく。キャラクターとして都合良く作られすぎていて、そこに愛着を感じるのも難しい。彼の一ノ国でのストーリーなども語られずに物語は進んで行くので、彼が異世界から来たという設定も最後に申し訳程度に語られるのみである。

偉大な王になるというエバンも、成長過程がストーリー上で見られることはなく、気づいたら王様になって認められてましたという印象しかない。物語は彼の都合の良い流れで語られ、彼が人の支持を得る過程がすっぽり抜け落ちている印象だ。

一応、長きにわたる種族間の対立や、戦争の歴史などが語られたりするがあっさりと解決してしまう。そこに重さを感じることも難しい。

仲間になるキャラクターにもバックストーリーは特になく、キャラクターに思い入れを持つことは出来なかった。彼らも国が壊滅寸前までいって問題を解決したのに、何の迷いもなくエバンの国へ行くと簡単に国を離れてしまう。

意思を感じない敵キャラたち

敵対するキャラクターも、そこに強い意志は感じられず、問題解決と共に豹変してしまう。「操られてたんだから仕方ないよね。悪いやつなんて二ノ国にはいないんだよ。」と言わんばかりの展開を見せる。

国というテーマを掲げながら、そこで描かれる国は実に軽いもので最後までエバンの王様ごっこを見せられている感覚しかなかった。大人向けのストーリーというものの、語られる物語は子供向けにしてもご都合主義で塗り固められていて、深みはない。

「真に子供向けに作られた作品は、十分大人の視聴にも耐えられる」と言ったのは宮崎駿監督だったか。二ノ国Ⅱは大人にも子供にも向けられていない中途半端な作りになってしまっている。

始めに「アルスラーン戦記」ではないと書いたのはそういうことだ。「アルスラーン戦記」のような重厚な物語はない。そのかわりに、国とはなんだろう?という疑問を投げかけるストーリーを堪能することはできるだろう。

ストーリー演出の物足りなさ

ゲームを始めてすぐに誰もがあれ?と感じるのが、イベントにおけるボイスの有り無しだ。二ノ国Ⅱは大半のイベントがテキスト表示で進められる。ほんの一部のシーンで、ボイス有りで進行すると言った具合だ。

多くのイベントシーンはテキストで進む。

ボイスなしというのは、ドラクエ11がそうであったように別にマイナス要素ではないだろう。しかし、PV等で有名俳優が声優として参加を謳っておきながら、ほとんど喋らないではがっかりする人も多いだろう。ギャラなのかスケジュールかはわからないが、無理が生じるのであれば本職の声優さんに任せたほうが良かったのでは?と思ってしまう。

始まりもそうだが、カットシーンもかなり少ない。前作ではスタジオジブリ製作協力のアニメーションムービーが物語を盛り上げてくれたのだが、今作ではそれがない。イベントシーンの多くはキャラクターが突っ立ってテキストが流れるものが多い。

スタジオジブリのアニメーションといかなくても、もう少し演出することは出来たのではないかと思う。せっかく美麗なグラフィックがあるのにもったいないと感じた部分だ。

進軍バトルとキングダムモード

国をテーマにした作品として、軍同士の集団バトルとして用意された進軍バトルだが、あまりうまくいっていない。

軍同士の戦いの「進軍バトル」

3すくみの要素や、部隊編成などからRTSのような戦略性の高いものを想像してしまうが、戦略性は高くない。実際には意識して操作すれば楽になるかもしれないが、ゴリ押しでなんとかなるというのがこのモードの結論だ。

開始前に自軍の能力をお金でブーストできたりするので、重要になるのはレベルくらいのものだ。レベルが低いとまず勝てない。勝てない場合は戦略が不足しているのではなく、ただ単にレベルが足りないだけだ。

何も考えずにゴリ押しするのがおすすめの攻略だ。

この進軍バトル、無駄に長いので私はストーリー上必須となる場面でしか遊んでいない。キングダムモードのスカウトを進めていれば、レベルの高い部隊は勝手に加わってくれるのでその部隊を使うだけでいい。

作ったからにはストーリー上で必ず遊んで欲しい。しかし、難しくするわけにはいかないという、どうにも中途半端な出来になってしまったように思えてしまうのが残念である。

街作りの楽しみ

キングダムモードは自分の国作りとなっているが、実際には街作りである。

クリア時のエスタバニア

自由に施設を配置できるわけではなく、あらかじめ設定してある施設をどの順番で建てていくかという部分がプレイヤーに与えられた自由な要素だ。

自由度は期待したものとは違って低いが、国力という明確な数字と見た目が変化していく様はおもしろく、夢中になれる要素はある。

作った施設の研究開発で、ゲーム進行を楽にする要素はあるが大きな影響を与えるほどではない。装備品の開発や強化などを行えるが、装備品は敵がドロップしたもので事足りてしまうので重要ではない。

スカウトしたキャラを配置して研究を進める。

フニャの育成、生産も前述したように重要ではないので使うことはなかった。経験値アップや、敵の宝箱ドロップ率を上げるといった要素だけで足りるので必要な分だけ進めても問題ない。

ただ、ストーリー進行上一定の開発が必要となるので、全く無視するというわけにもいかない。国の資金増加、研究開発には現実時間が必要となるので、無駄に放置することが増えてしまうかもしれない。

あくまで国を作るというよりも、街を作るという要素が強いのでここでも王様ごっこしているという印象を受けてしまう。

まとめ

「二ノ国Ⅱレヴァナントキングダム」は多くの点であと一歩、もう少しといった惜しさがある。加えて、ストーリーは演出と共に望む水準に達していないと感じた。

しかし、現行機でもトップクラスのグラフィックと、イメージを増幅させる久石譲氏の音楽。物足りなさはあるが、前作の課題だった戦闘システムの変化など、次回作があればという可能性を感じさせる作りになっている。

『期待』は印象を大きく変える。

私の期待が大き過ぎたからか、「二ノ国Ⅱレヴァナントキングダム」はJRPGの高みへとはたどり着けたと私は言えない。しかし、最後まで遊べるだけの遊びやすさなど駄作とは言えない。

次回作があるのなら、次こそはJRPGの高みへと上り詰めて欲しいと期待してしまう。持っている素材の多くは輝いているものが多いのだから。

個人的ゲーム採点

7.5/10

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