モンスターハンターワールドは間違いなく良作である。
人の記憶というのは、楽しかった思い出よりも辛かった思い出の方が鮮明に残る気がする。いや、辛かった思い出にひも付けられるように、楽しかった思い出が記憶されていると言うべきかもしれない。
大好きだったあの子との楽しいデート、親密な1夜も、別れてしまいもう戻ることがないのだという喪失感にひも付けられて、記憶の中にしまわれているような気がする。
モンスターハンターワールドを遊びながら、ふとそんなことを考えていた。
良くも悪くも大幅に変更されたシステム
モンスターハンターワールドでは、過去作において不便だった点が大きく変更され、実に遊びやすいゲームへと進化している。
ピッケル、虫あみが不要になり採掘・採集の効率が上がった。それにより、アイテムポーチを圧迫する要素がなくなり管理が楽になった。また、時間経過でポイントは復活するので、探索時においてはいくらでも採掘・採集が可能になっている。
ペイントボールがなくなり、導蟲が誘導してくれる。モンスターの痕跡を一定数集めると追跡が始まる。モンスターの調査レベルが上がって行くと、クエスト開始時から追跡してくれたりする。
モンスターが弱るとドクロアイコン表示されるので、捕獲の見極めがスキルなしで判断可能になった。モンスターのエリア移動した際にアイコン確認することで、眠るために巣に帰るのか判断できる。
装備作成時の派生先がある程度表示されるようになった。
などなど、他にも多くの点で改善が施されている。別のゲームと言えるくらい変更点が多いので、シリーズ経験者ほど面食らうかもしれない。ただ、今作はプレイヤーがモンスターと戦うことに重きを置いていることはひしひしと感じられる。
逆にマルチプレイに関しては、多くの人が指摘するようにあまり使い勝手が良くはなく過去作の方が良かった気がする。
ソロで楽しむモンスターハンター
集会エリアに行っても他のプレイヤーは姿が見えずコミュニケーションが取りづらい。今作から追加されたクエストへの途中参加があるためか、クエストを1人でスタートする人も多い。野良プレイでは、みんなで集まって出発!とは行かない状況にある。途中参加だと報酬が減るということもあり、ソロでいいかとなってしまう場面が多い。
今作のマルチプレイはおまけ程度の印象で、開発側はソロプレイを推奨しているのではないかとすら思えてくる。実際、お金稼ぎを考えてもソロの方が分割されることなく受け取れるし、何よりもモンスターの体力が大きくならないというメリットがある。(モンスターの体力はソロか?マルチか?でしか判断されていないようで、中途半端な2人、3人ではモンスターが手強くなる。)
ソロでも環境利用したり、モンスターの縄張り争いを起こさせることで、楽に狩猟することも可能だ。ストーリーが過去作よりも重視されていたりする点から見ても、ソロプレイ前提のような作りになっている。
現にネット上ではソロでのタイムアタックが盛んに行われている。
海外を意識したモンスターハンター
グラフィックの大幅な進化。大きく変更したシステム。ソロプレイメインの作り。これらが海外を強く意識した作品になっていると強く感じる。
国内ではメジャータイトルとなったモンスターハンターシリーズは、新作を出せば一定数を見込めるタイトルだ。多くのファンが居て、みんなで持ち寄ってプレイするというスタイルが確立されてしまっている。
世界的に見ればそのようなプレイスタイルは稀なケースなのだろう。(ニンテンドースイッチが世界的に売れたことで、今後どうなるかはわからないが)海外でのファーストモンスターハンターとなるべくして作られた印象が強い。
けれども、日本のゲームメーカーが海外を意識するあまり、国内市場を無視したような作りにはなっていないことは素晴らしいと思う。(PS3・Xbox360時代ではそういったタイトルがいくつかあった)
大きく変化した要素の大部分はシリーズファンにとっても歓迎すべき点であるから、従来のファンを裏切るような結果にはなっていない。
モンスターハンターの魔力
すごく快適に、ストレスなく遊べるようになったモンスターハンターワールドだが、同時にモンスターハンターが持っていた魔力のようなものは失われてしまったのかもしれない。
モンスターハンターポータブルにおいて、「モンハン持ち」という特殊なゲーム操作が誕生した。実際にやったことがある方はおわかりかと思うが、ものすごく窮屈なプレイスタイルである。だが、そこまでしてでも、このゲームを攻略したい!と思わせるだけの魅力があったのだ。
今作のシステムからするとものすごく面倒で、不便だったまま続いてきたシリーズもファンが変わらずに付いてきたことは、不便さを上回る魅力が確かにあったのだと思う。
モンスターハンターワールドをプレイし始めた頃、ものすごく戸惑った。今までの良くも悪くもお約束となっていた部分がなくなっていたからだ。しばらくの間、馴染むことができなかった。全く別のゲームを遊んでいるような気さえした。
私はあの不便で面倒くさいシステムが好きだったのだ。面倒くさく、不便であるがゆえに、それを乗り切ろうとするのが楽しみだったのだ。いかに快適にプレイできるかを考え、アイテムの配置を考えたり時に生まれるオカルトのようなものまで、大好きで楽しんでいたのだ。
モンスターを倒すことと同じくらい、システムを攻略することに夢中になっていたのが今までのモンスターハンターだった。
ゼルダの当たり前を捨てた「ゼルダの伝説ブレスオブワイルド」は、全く新しく生まれ変わってもしっかりとゼルダの伝説であった。モンスターハンターワールドはどうだろうか?
モンスターハンターワールドは快適になり、今まで不便さはほとんど身を潜めた。代わりにシステムを攻略するという、長い間ユーザーが格闘してきたものは喪失してしまった。
それを嘆くべきなのか、快適化され、モンスターと戦うことに専念できるようになったことを喜ぶべきなのか、私にはまだ判断が付かない。
モンスターハンターの今後
モンスターハンターワールドがナンバリングタイトルにならなかった理由は、プレイしてみるとなんとなくわかる。海外に向けた作品だからこそのワールドなのだろう。
持ち寄り型のマルチプレイを求める声があるのは無視できないだろうし、国内で数が見込める以上、ニンテンドースイッチで新たなモンスターハンターは出るだろうと予測する。
「モンスターハンターフロンティア」はモンスターハンターワールド発売でフェードアウトしていくのかと思ったが、そうではなかった。これは、モンスターハンターワールドをプレイして、あまりオンラインに重きを置いていない感じからも納得できた。
となると、今後は3つに派生した形でシリーズ展開していくのではないだろうかと予想する。
- モンスターハンターポータブルから続く、ハード持ち寄り型マルチプレーのナンバリングタイトル
- オンライン特化型の「モンスターハンターフロンティア」
- モンスターハンターワールド(ソロメインシリーズ?)
モンスターハンターワールドがシリーズ化されるのかは未知数だけれども、それぞれに特化した形で出て来るのではないかと予想する。
総評
モンスターハンターワールドは快適に、モンスターと向き合うべく進化したシリーズ作品だ。不満点はあれども間違いなく良作である。
人は辛い記憶に結びつけた思い出を、鮮明に記憶しているようである。ファミコン時代のドラクエが語り継がれるのも、数多くの不便さという記憶に結びついているからだろう。
快適なだけの作品は伝説にはならない。なんらかの強い不便さ面倒くささを語り継がれるゲームは持ち得ている。モンスターハンターワールドをプレイして強く感じたことだ。
快適であるがゆえに失ったものがある気がしてならない。
個人的ゲーム採点
8/10