
タイムトラベルができたとしたら、あなたが行きたいのは未来だろうか?それとも過去だろうか?
人類の夢とも言える時間跳躍だが、実際に時間を飛び越えてきたと証明した人が居ない以上夢物語だと笑うことも、可能であると言い放つことのどちらも正解で間違いといえるだろう。まるでシュレディンガーの猫のようである。
仮にタイムトラベルがあったとして、『未来』へは本当に飛べるのだろうか?「今」という時点からすれば何も確定していないはずの世界に飛んで行けるとしたら、そこはどんな世界なのだろう。『過去』へ飛んだとしてそこは本当に私たちの知る過去なのだろうか?
そして、タイムトラベルと切っても切れないタイムパラドックスの問題。過去へ行き、誰かの存在を脅かすことになった場合に元の世界の存在は消えるのか。
正解の証明がない話だから、タイムトラベルの話は尽きることがない。どんな話であろうと正解であるかもしれないといえる。
ZERO ESCAPE「刻のジレンマ」はシリーズ完結編となる作品である。今作も9人の人物がゲームに参加させられることになり脱出を目指して行く流れは恒例のものとなっている。今作ではキャラクターデザインが変わってたり、ゲームシステムにも変化が見られ新鮮な形でプレイできる。また、過去作の主人公が集結するという完結編にふさわしい内容だ。
過去作についてはレビュー記事を読んでいただければ。


*今回はXbox One版をXbox Series Xでプレイしたデータで記事を書いています。
今作のシステム


前作までストーリーはノベルパートで語られていたが、今作ではシネマパートと呼ばれるムービーシーンで進行していくことになる。そのためキャラグラフィックも大幅に向上している。よく動き、有名声優によるフルボイスの演技も相まって引き込まれるものになっている。
一方で台詞の途中で飛ばして進めない点や、スキップ機能を使うと前作までのような早送りではなく、シーンがいくつか飛んだチャプタージャンプのような機能になっているのは気になった。
自分のペースで読み進められた過去作と違い、ひたすらムービーを眺めることになるのでプレイの大半は視聴することになる。このあたりはリッチになったと取るか、ストレスになるか評価が分かれるところだろう。
「フローティング・フラグメント・システム」

過去作では明確な主人公がいて、主人公目線でストーリーが語られていたが今作は始めから3チームに分かれており、それぞれのリーダー目線でストーリーを追っていくことになる。
今までの扉を選択して謎解きをしてといった流れはなくなり、「フローティング・フラグメント・システム」という新たな仕組みが導入されている。始めに3つのチームから一つを選び、その中にある物語の断片を選んでゲームを進めていく。
どの断片がいつ起こったもので、他のチームとどれが繋がるのかわからないため手探りで進めて行きながらも徐々に全貌が明らかになるという作りは面白かった。過去作からこのシステムに変わっているのには、ストーリーとも密接に関わってくる。クリアした断片はフローチャートに書き込まれていくのだが、このフローチャートもストーリーの謎を解くヒントになっている。
ディシジョンパート

ディシジョンゲームという重大な選択を迫られるパートである。どのチームを生かすか?他のチームを助けるか?自分たちが助かるためにどちらを選ぶ?といった選択を謎解きパートの後に迫られる。当然、選択の結果はゲームに大きく影響してくる。
正しいように思える選択が実は間違いだったり、時間制限のある選択では「選ばない」という新たな選択肢も出てくる。先の読めない展開となっているのが、過去作のような選ぶだけの選択肢とは違い重みを増している。
難易度の上がったクエストパート

今作も謎解きパートは健在である。断片を選ぶとどこかの部屋でチームは目覚めるが部屋には鍵がかかっており、閉じ込められた部屋から脱出をするという流れである。
目覚めたときに必ずしもチーム3人が居るとは限らず、中には2人で進めるパートや分断されるパターンとシチュ江ショーンに変化がつけられている。
目的も扉からの脱出がお決まりになっていた過去作とは違い、生き延びるための方法方を探すといった変化が見られ飽きさせない。


基本的な内容は今まで通り、アイテムやファイルを見つけてクリアのヒントを探すのだが手に入れたアイテムにパズル要素があったりと、組み合わせるだけだったものから変化している。
前作では難易度の選択があったが、今作では廃止されている。


今作では何かを調べるたびに他のチーメンバーが反応し、時にはジョークを交えた反応を返してくれたりと探索中のちょっとした楽しみもある。前作ではイージーを選べば雑談を挟んでくれるが、ハードだと反応がほぼなくなるといった寂しい仕様だったので良い改善点と言えるだろう。
大きな伏線は回収されたストーリー

今作の「ディシジョンゲーム」は9人が3つのチームに分けられ、それぞれが行き来のできない別の区画に閉じ込められている。脱出するためには各区画にあるXドアからしか出ることができず、その扉を開くためには6つのパスワードが必要になる。
肝心のパスワードの入手方法は、誰かが死亡すること。つまり、6人が亡くなれば残った3人は脱出できるという内容になっている。
また、90分ごとに眠らされ記憶を消去されるというルールもある。これは「眠り姫問題」をモチーフにしており今作のテーマになっている。(解説は難しいので気になった方は調べてみてほしい)
脱出には6人の死亡が条件となっているため、望むとも望まなくとも誰かを亡くす選択をすることになっている。その亡くなり方も凄惨で、出血シーンも明らかに増えている。グロ表現に耐性がない方にはプレイしていて気分が悪くなるかもしれないので注意。グラフィックが向上したことが良くも悪くも影響している。


過去作の主人公が集結してるのは嬉しい反面、9時間9人9の扉で主人公だった淳平がやさぐれてしまっているのは衝撃だろう。おまえは誰?といいたくなる変わりようである。ストーリーが進むといつのまにか丸くなっていたりするのだが、序盤に驚く要素だろう。
一方の茜は淳平に何かあると豹変するヤバい女になっており、1作目の二人を期待していると肩透かしを食らうことになる。


善人シボウデスの2人のうち、シグマは前作のイメージとは少し変わっているがそうなった理由は前作をラストまで進めた人なら想像も付くだろう。ファイはほとんど変化なくメガネを掛けているくらいである。
前作で明かされなかった「ファイは何者なのか?」が今作では明かされることになる。私は全く予想していなかった展開に驚いたが、勘のいい人なら早い段階で気づくかもしれない。


ヨコオタロウのような被り物をした謎の少年にも秘密があるのだが、そのトリックには納得しにくいものがあった。くわしくはネタバレになるので避けるが、多くの人が「なんだそれ」と突っ込んだだろう。
もうひとり本作におけるキーパーソンのダイアナ。まぁ、見た目と声が能登麻美子さんなので前作を遊んだ人なら誰と関連するのか予想はつくだろう。
冒頭に触れた時間跳躍が今作の肝になるのだが、あまりにもご都合主義過ぎやしないかと個人的には受け入れにくかった。これまでもぶっ飛んだ設定があったシーズだが、今作は少し強引すぎないかと思う部分も多かった。
物語の大筋は伏線回収して完結編として終わりを見せているのだが、残された謎は多い。また、今作の終わり方に納得できるかは人それぞれだろう。
後日談が存在するのだが、クリア後にひっそりとゲーム内ファイルに追加されているという不親切なものになっている。クリアして終わってしまった人は存在にすら気づけないのはいかがなものか。その内容もテキストのみと寂しいものになっている。
まとめ
大きな謎はしっかりと解明されていて、完結編としてまとめられている。ただ、ムービーシーンを多用してどこか強引に終わらせたように見えるのは「メタルギアソリッド4」を思い出させる。
謎のまま終わってしまった部分も少なくはないので、もったいないなと思える。
それでもシリーズを通して遊んで来た人にとっては、満足のいくものになっているのではないか。おまけのようにつけられた謎解きパートではなく、それすらもストーリーに密接に関わってくる作りは見事と言いたい。
個人的ゲーム採点
8.5/10
