どーも、もりそばです。
今回紹介する「今月の気になるソフト」は「シルバー事件2425」です。
前回紹介した「二ノ国Ⅱ レヴァナントキングダム」は、幅広いユーザーにお勧めできるタイトルでしたが、今回の「シルバー事件2425」は真逆のものすごく限られたユーザーにお勧めするタイトルになるかと思います。
PVを眺めてみても、さっぱりどんなゲームかわからないと思った方、間違ってません。そんな「シルバー事件2425」を紹介していきたいと思います。
これは駄作か?怪作か?
「シルバー事件2425」は、元々初代PlayStationで1999年に発売された「シルバー事件」のHDリマスター版で、ジャンルはアドベンチャーゲームとなっています。加えて、モバイル版で展開された続編となる「シルバー事件25区」をリメイクし2本セットにした作品です。(「シルバー事件」HDリマスターは単独でPC版が先行して発売しています。)
私はオリジナル版をかなり昔に遊んだことがあるので、プレイ経験があるという上で「シルバー事件」の紹介をしたいと思います。
始めに述べたように、このゲームは人を選びます。話の内容も暗く、重いものでかなり難解です。最後までたどり着いても頭の上に?マークがいくつも並ぶことになると思います。
アドベンチャーゲームとなっていますが、一部でパズルや3Dダンジョンといったインタラクティブ要素があるくらいで、基本的に文章を読み進めるノベルゲームと思う人もいるかもしれません。
登場人物の多くが個性の強いキャラクターで、用いられる文章もカタカナ交じりの独特な文体となっているため、読みにくいと感じる人もいると思います。
しかし逆に、難解で暗く重いストーリーに惹きつけられるものがあれば、文章を読み進めることも苦にはならず、物語の確信に迫りたいという衝動に駆られることでしょう。少々クセのある文章も、それ自体が演出として使われていたりと、好みが合えば至極の読み物となると思います。
本作の特徴でもある『フィルムウィンドウ』は、画面に複数のウィンドウを表示して、それぞれが独立して情報を表示するというおもしろい手法がとられています。
「常に画面が動いているアドベンチャーゲームにしたい」と作られたこのUIは、今見ても洗練されていると私は思います。読み進めるのが基本のゲームなので、もっと読むことに集中させてほしいと思う人もいるかもしれません。
圧倒的な個性の固まりのような本作は、多くの人にとっては拒否反応を示す作品かもしれません。しかし、それゆえに17年の時を経てなお、一部の人の心を掴んで離さないカルト的名作と呼ばれるのかもしれません。
「須田ゲー」が放つ独自性
これほどの個性を放つ作品を作ったのは、グラスホッパーマニュファクチュアの須田剛一さんというゲームクリエーターです。「シルバー事件」は、須田さんが独立しグラスホッパーマニュファクチュアを設立して、初のオリジナルタイトルです。
須田さんのが手がけたゲームは、その全てが個性的で一部では『須田ゲー』とジャンル分けされたりもします。
私が『須田ゲー』と出会ったのは、「キラー7」というゲームです。カプコンが販売を担当したキラーセブンは、カプコンがニンテンドーゲームキューブ5つの独占新作タイトルとして、バイオハザードなどと共に大々的に発表されたタイトルでした。(キラー7も含め、バイオシリーズなど、後に独占ではなくPS2でも発売されました。)
スティックや十字キーではなく、ボタンを押すことで移動するという独特の操作や、登場人物、ストーリーともにぶっ飛んでいて、これまた一般受けはしにくいゲームとなっています。
ストーリーは最後まで遊んでも?マークが付くのは、シルバー事件と同じです。ですが、独特の言い回しや、カットシーンなど波長があえばものすごく惹きつける魅力があり、私もすっかり『須田ゲー』の虜になりました。
順番ではキラー7の前になりますが、「花と太陽と雨と」は、プレイしていくとシルバー事件との繋がりを感じさせるストーリーになっていて、読み進めることが主だったシルバー事件よりも操作することを強く意識した作品となっています。
しかし、操作するというよりも無駄に動き回されると感じるゲーム性や、PS2としてはやたらローポリゴンのグラフィックを味があると取れるか、手抜きと取るか、人を選ぶゲームです。
Wiiで発売された、任天堂ハードにそぐわない「ノーモアヒーローズ」は、Wiiリモコンをうまく使った楽しいゲームでした。
ストーリーはそれまでとは異なり、実にシンプルでわかりやすくなりましたが、登場人物がぶっ飛んでいるのは変わらず、独特の台詞回しは健在です。
キラー7でもバイオレンス要素が強めでしたが、加えてエロティックでB級テイストな悪ふざけと更なる個性を主張しています。それまではストーリーの難解さが、人を選ぶ要素のひとつだったのが、「ノーモアヒーローズ」からは、作品全体のノリが人を選ぶ要素になったように思えます。
その後の「ロリポップチェーンソー」では、そのノリは更にパワーアップして悪ノリとも言えるゲームになっています。
「須田ゲー」の変化
「シルバー事件」ではテキストを読み進める形を取り、次の「花と太陽と雨と」では操作することを強く意識した作品になりました。「キラー7」では独特な操作ながら、シューティングゲームとして、ゲーム性を向上させることに成功して居たと思います。(「キラー7」の監修には、初代バイオハザード開発者の三上真司さんが加わっていたことも関係しているかもしれません。)
個人的には、キラー7までのゲームはストーリーありきのゲームだったと思っています。須田さんの中の語りたいものを表現するために、ゲーム表現を模索していたように思えます。
「ノーモアヒーローズ」から現在に至る須田さんのゲームは、アクションゲームが多数を占めています。ゲームありきで、そこに自分のテイストをどう落とし込んでいくか?という手法に変化したと思っています。(「キラー7」からその傾向見え始めていた気もします。)
プロレス、音楽に加え、バイオレンスとエロティックに悪ふざけと、須田さん個人が好きなものをゲームに落とし込んで作られたゲームは、圧倒的な個性を放っています。変化はしていても、好き嫌いをはっきり分ける作品のテイストは失われていないと言えます。そのゲーム作りは、インディータイトルのように「作りたいゲームを作る」と主張しているように思えます。
万人向けでないからこそ輝く
個人的には、難解で、ある種電波のようなストーリーで語られる『須田ゲー』が好きです。だからこそ「シルバー事件」のリマスターはとても嬉しく思っています。
何度も言いますが、『須田ゲー』は人を選びます。人によっては褒めるところのないクソゲー認定されるでしょう。人によっては他に類を見ない快作となるでしょう。
『須田ゲー』に関していえば、多くのレビューの得点は参考にしてはいけないというのが、私からのアドバイスです。PVを観て、事前情報に目を通して、何か感じるものがなかったら購入はやめた方がいいです。逆に何か感じるものがあったら、買って後悔するのもいいでしょう。
つまるところ、『須田ゲー』は波長が合うか?会わないか?が重要であって、ゲーム内容云々ではないからです。
「誰かにとってのクソゲーは、誰かにとっての神ゲー」
それを体現している「シルバー事件2425」は3月15日発売です。PC版「シルバー事件25区」単体も配信が開始されました。「シルバー事件HDリマスター」の体験版がSteamで用意されているので、体験版を遊んでみるのも良いかと思います。